システム開発費用の比較|国内開発とベトナムオフショア

システム開発費用の比較|国内開発とベトナムオフショア

国内ベンダーの見積もりや来期の予算枠は手元にある。同じ開発をベトナムに出すと、費用はどこまで変わるのか。この記事では、その問いに答えるためのシステム開発費用の比較を、公開データだけで組み立てます。対象は、情シス部門や事業部門で発注を判断する立場の方です。

先に要点をまとめます。

  • 日本とベトナムの賃金差が大きいのは技術者クラス。管理職クラスでは差が小さい
  • 費用が下がるのは、詳細設計からテストまでの「人数がかかる工程」。要件定義と受け入れは国内に残る
  • ブリッジSEとPMの管理工数、仕様の確認にかかる時間は、国内開発より増える
  • 数人月で終わる開発では差が出にくく、半年以上続く開発ほど差が出やすい

MOHAの料金は、この記事には載せていません。金額は要件と体制で変わるため、個別にご説明しています。

システム開発費用の比較は「費用の構成」から始める

システム開発の費用相場を調べると、人月単価の一覧がいくつも見つかります。ただ、単価だけを並べても、手元の見積もりがいくらになるかは分かりません。開発費用は、単価と工数の掛け算を、役割ごとに積み上げたものだからです。

費用を構成する項目ごとに、国内開発とベトナムオフショアの違いを整理すると次のようになります。

費用の項目 国内開発 ベトナムオフショア 費用への影響
エンジニアの人件費 国内の賃金水準 ベトナムの賃金水準 下がる(差が最も大きい)
PMの管理工数 日本側PMが担当 ベトナム側PMに加え、発注側の窓口も必要 単価は下がるが、工数は増える
ブリッジSE 不要 仕様の橋渡し役として必要 増える(国内にない項目)
コミュニケーション 日本語で口頭でも進む 文書化と確認の往復が増える 増える
仕様変更への対応 変更のたびに調整 伝達の手間が加わる 仕様が固まっていないほど増える
品質保証(テスト・レビュー) 国内の単価で実施 テスト工数は下がり、受け入れ確認は残る 下がる部分と残る部分がある

下がる項目と増える項目が混ざっているため、差し引きで見ることになります。以下では、この表の各行を公開データで確かめていきます。

MOHA Softwareのメンバー3人がオフィスで打ち合わせをしている様子

公開データで見る日本とベトナムのエンジニア賃金

人件費の差は、開発会社の料金表ではなく、賃金の統計から確認できます。

国内:設計を担う職種と実装を担う職種で1.5倍の差

厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査には、職種ごとの賃金が載っています。企業規模10人以上、男女計の数字は次のとおりです。

職種 平均年齢 きまって支給する現金給与額(月額) 年間賞与その他特別給与額 年収の目安
システムコンサルタント・設計者 38.3歳 54.21万円 238.52万円 約889万円
ソフトウェア作成者 37.1歳 39.08万円 109.51万円 約578万円

年収の目安は、月額の12か月分に年間賞与を足して算出しました。上流工程を担う職種は、実装を担う職種の約1.5倍です。会社が負担する費用には、社会保険料や採用・教育の費用が加わります。

人材の確保も簡単ではありません。IPAのDX動向2026によると、DXを推進する人材の量が不足していると答えた企業は、2025年度で85.5%でした。「大幅に不足している」は50.1%です。国内の見積もりが高くなる背景には、賃金水準に加えて、この需給があります。

ベトナム:技術者の基本給は横浜の約2割、管理職は4割台

ジェトロは、各都市の賃金を米ドルにそろえて比較できる形で公開しています。2024年度アジア大洋州・日本投資関連コスト比較調査(2025年3月)から、関係する行を抜き出しました。

項目(月額の基本給、米ドル) ハノイ ホーチミン 東京 横浜
エンジニア(中堅技術者) 520 619 2,636 2,878
非製造業マネージャー(課長クラス) 1,688 1,537 3,838 3,654
賞与(基本給に対する月数) 1.6か月 1.6か月 4.63か月 4.50か月

ハノイの中堅技術者の基本給は、横浜の約18%、東京の約20%です。一方、課長クラスのマネージャーでは、ハノイは横浜の約46%、東京の約44%まで差が縮まります。賞与の月数も日本のほうが多く、年間で見ると技術者クラスの差はさらに広がります。

ただし、この表はIT職種に限った数字ではありません。ベトナムの数字は日系企業への調査をもとにした実務経験5年程度の技術者、日本の数字は人事委員会の調査による技術係長の給与です。定義がそろっていないため、水準の目安としてご覧ください。

この表から読み取れるのは、「人数の多い技術者層ほど差が大きく、管理を担う層ほど差が小さい」という傾向です。オフショア開発の費用を考えるときは、この傾向が前提になります。

オフショア開発の人月単価は市場平均でどのくらいか

賃金と、開発会社が提示する人月単価は別のものです。人月単価には、会社の管理費や設備費、利益が含まれます。そこで、ベトナムオフショアの単価の市場平均も確認しておきます。

オフショア開発.comのオフショア開発白書(2025年版)は、オフショア開発会社へのアンケートから、国別・職種別の平均単価をまとめています。ベトナムの数字は次のとおりです。

職種 人月単価の市場平均 前年比 プログラマーを1とした比率
プログラマー 40.1万円 +1.8% 1.00
シニアエンジニア 50.0万円 +3.5% 1.25
ブリッジSE 59.0万円 ±0% 1.47
PM 71.4万円 +2.0% 1.78

これは同白書が集計した市場全体の平均であり、MOHAの料金ではありません。実際の金額は、技術領域、経験年数、契約形態によって変わります。

見ておきたいのは右端の比率です。ブリッジSEはプログラマーの約1.5倍、PMは約1.8倍です。ジェトロの賃金データで管理職クラスの差が小さかったことと、同じ向きの結果です。体制に占めるブリッジSEとPMの割合が大きいほど、国内との費用差は小さくなります。

オフショア開発のコスト削減が効く工程、効かない工程

オフショア開発のコスト削減は、工程によって効き方が違います。

下がるのは「人数がかかる工程」

IPAのソフトウェア開発分析データ集2022は、新規開発270件の実績から、工程ごとの工数の比率を示しています。中央値は次のとおりです。

工程 工数の比率(中央値) オフショアで担当しやすいか
基本設計 16.5% 発注側との合意が中心。国内側の関与が大きい
詳細設計 15.7% 担当しやすい
製作(実装) 31.6% 担当しやすい
結合テスト 20.1% 担当しやすい
総合テスト 11.9% 業務知識が必要な確認は国内側に残る

詳細設計、製作、結合テストを合わせると、開発5工程の工数の約67%になります。右の列は、役割分担の一般的な目安として添えました。

ここから簡単な計算ができます。仮に、この67%の工程の費用が半分になったとします。残りの工程が国内と同じ費用だとすると、全体の削減は約34%です。半分にはなりません。しかも、この比率には要件定義と受け入れ検査が含まれていません。どちらも発注側と国内側が主に担う工程です。

オフショア開発白書(2025年版)の発注企業アンケートでも、国内と比べたコスト削減率は「31〜50%削減が主流」とまとめられています。上の計算と近い範囲です。

増えるのは、橋渡しと確認の費用

国内開発にはない費用も発生します。

1つ目はブリッジSEの工数です。ブリッジSEは、仕様を日本語からベトナム語に置き換え、チームからの質問を整理して発注側に返します。前の章で見たとおり、単価はプログラマーより高くなります。

2つ目はコミュニケーションコストです。国内なら口頭で済んでいた説明も、文書にして渡すことになります。その文書を用意する発注側の担当者の時間も、費用の一部です。

3つ目は仕様変更です。変更の内容を伝え、影響範囲を確認する往復が1回増えます。仕様が固まらないまま始めるほど、この費用は膨らみます。

4つ目は品質保証です。テストの実行そのものは費用を抑えられます。ただ、業務に合っているかを確かめる受け入れ確認は、発注側に残ります。

オフショア開発白書(2025年版)のリリース記事でも、発注企業が感じた課題の上位は「コミュニケーション力」と「品質管理」でした。成功のポイントには「ブリッジSEの能力」が挙がっています。増える費用を抑えられるかどうかは、ブリッジSEと品質管理の体制に左右されます。

要件定義書を分析するAIアシスタントSpecLensの処理フロー図

MOHAは、仕様変更の費用を抑えるために、初期段階でプロトタイプを作り、仕様が確定してから本格的な開発に入ります。要件定義書の矛盾や欠落を検出するAIアシスタント「SpecLens」も自社で開発しました。仕様の食い違いは、実装の前に見つけたほうが安く済むためです。

時差が2時間であることも、確認の往復を短くします。日本時間の10時はベトナム時間の8時にあたり、日本の営業時間の大半で双方が席にいます。

費用差が出やすい案件、出にくい案件

ここまでの内容を、案件のタイプに当てはめると次のようになります。

案件のタイプ 費用差 理由
半年以上続くWebシステム・業務システムの新規開発 出やすい 実装とテストの工数が大きく、管理工数を複数人で分担できる
リリース後も機能追加が続く自社サービス 出やすい 同じチームが続けて担当し、立ち上げの費用を長い期間で回収できる
既存システムの保守と小規模改修の継続 出やすい 月ごとの作業量が安定し、体制を固定できる
数人月で終わる単発の開発 出にくい ブリッジSEとPMの工数が、全体に占める割合として大きくなる
要件が決まっておらず、毎日の対面調整が必要な構想段階 出にくい 人数がかかる工程がまだ少なく、確認の往復が費用の中心になる
国内拠点での作業が契約で義務づけられている開発 対象外 開発の場所そのものが条件になっている

規模の目安として、MOHAが公開している事例を1つ挙げます。人材送り出し企業向けの語学学習プラットフォーム「COMY LMS」は、27.49人月、約5〜6か月の開発でした。体制はPM1名、バックエンド2名、フロントエンド1名、QA1名、UI/UXデザイナー1名です。6名のうち管理を担うのは1名で、残りの5名は賃金差の大きい層にあたります。この程度の規模になると、管理工数の割合が下がり、費用差が出やすくなります。

反対に、1〜2名で数週間の作業では、管理と橋渡しの工数が全体の多くを占めます。こうした場合は、既存の保守や次の開発とまとめて体制を組めるかを、先に検討します。

MOHAのオフショア開発センターでは、専属チーム、スタッフ補強、プロジェクト単位の3つのモデルを用意しています。どのモデルでも、指揮命令はMOHA側のPM/ブリッジSEを通じて行います。要件定義から一括で任せたい場合は、システム受託開発のページもご覧ください。

円安は費用差にどう影響するか

ベトナムのエンジニアの給与は、ベトナムドンで支払われます。発注側が支払うのは円です。そのため、円安が進むと、円で見た費用差は縮まります。

先ほどのジェトロの表は、1米ドル=146.20円、1米ドル=24,081ドンで換算されています。つまり、表の比率はこの時点の為替を前提にしたものです。円が安くなれば、同じドン建ての給与でも円換算の額は上がります。

オフショア開発白書も、為替の影響を毎年取り上げています。リリース記事の表現は、2024年版が「円安の逆風」、2025年版が「円安の影響が一巡」でした。あわせて、ベトナムの単価は前年比でプログラマーが1.8%、シニアエンジニアが3.5%上がっています。費用差は固定された数字ではなく、為替と現地の賃金上昇の両方で動きます。

発注側にとって大事なのは、為替の変動を誰が負うかです。日本法人と円建てで契約する形であれば、契約期間中の請求額は為替で変わりません。影響が出るのは、契約の更新や単価の見直しのときです。海外の会社と外貨建てで直接契約する場合は、支払いのたびに円換算の額が変わります。

MOHAの契約窓口は、横浜・みなとみらいの日本法人である合同会社MOHAジャパンです。請求の通貨や見直しの条件は、商談の際はMOHAにご質問ください。海外の会社と直接契約する場合の注意点は、日本企業が海外ベンダーと契約する際の落とし穴と対策にまとめています。

オフショア開発の見積もりの確認点

オフショア開発の見積もりを受け取ったら、総額の前に内訳を見ます。確認したいのは次の6点です。いずれも、商談の際はMOHAにご質問ください。

確認点 見るところ
役割ごとの人数と稼働率 プログラマー、シニアエンジニア、ブリッジSE、PM、QAの人数。専任と兼任の区別
工程の範囲 要件定義、基本設計、受け入れ支援を含むかどうか。含まない工程は発注側の工数になる
ブリッジSEとPMの割合 体制全体に占める割合。小さな体制ほど高くなる
仕様変更の扱い 変更が出たときの見積もりの出し方と、合意の手順
テストの範囲 単体・結合・総合のどこまでを含むか。不具合の修正の扱い
通貨と期間 請求の通貨、契約の最低期間、単価を見直す時期

国内の見積もりと並べるときは、同じ範囲にそろえます。国内の見積もりが要件定義から受け入れまでを含み、オフショアの見積もりが設計以降だけであれば、差額の一部は範囲の違いです。

MOHA Softwareのメンバーがオフィスでハイタッチをしている様子

MOHAのトップページでは、お客様から「分かりやすくより詳細に安心感のあるWBS」を提示されたという声を紹介しています。見積もりに作業の分解(WBS)が付いていれば、どの工程に何人月かかるのかを、発注側でも確かめられます。契約書の項目は、オフショア開発サービス契約の基本構成と注意点をご覧ください。

よくある質問

オフショアにすれば、開発費用は半分になりますか?

なるとは限りません。賃金差が大きいのは技術者クラスで、工数の比率では開発5工程の約3分の2にあたります。要件定義、受け入れ、ブリッジSEとPMの工数は残るか増えるため、全体の削減は単価の差より小さくなります。

小規模な開発でも費用差は出ますか?

数人月の単発の開発では、出にくくなります。体制が小さいと、管理と橋渡しの工数が全体に占める割合が上がるためです。保守や追加開発とあわせて継続的な体制にできる場合は、事情が変わります。

ベトナムの単価は今後も上がりますか?

オフショア開発白書(2025年版)では、ベトナムの単価は前年より上がっています。上昇幅はプログラマーで1.8%、PMで2.0%です。長期の計画では、単価の見直しの時期と条件を契約の段階で決めておくと、予算を立てやすくなります。

国内の見積もりしか手元にありませんが、相談できますか?

ご相談いただけます。お手元の見積もりの範囲と体制をもとに、ベトナムの体制に置き換えたときの構成をご説明します。

お問い合わせ・ご相談

開発費用の差は、案件の規模、工程の範囲、仕様の固まり具合で変わります。ご検討中の開発がどちらに当てはまるかは、お問い合わせ・ご相談からお気軽にお尋ねください。日本法人の担当者が日本語で対応します。

参考文献

moha software it outsourcing