生成AIの導入で最も多い失敗は、技術的な失敗ではありません。PoCは動いたのに、本番に進む判断ができないまま終わる、という形です。
原因の多くは委託先の技術力ではなく、委託の設計にあります。何を委託し、何を自社に残すかを決めないまま始めると、どちらの側も次の一歩を決められません。
この記事では、生成AIの委託が従来の受託開発とどう違うかを整理し、委託範囲の決め方を4つの型で示します。そのうえで、ベトナムを選ぶ場合の判断材料をまとめます。MOHAはハノイに開発拠点を持ち、日本法人が契約と窓口を担当しています。
生成AIの委託は、従来の受託開発と前提が違います
業務システムの受託開発では、要件定義で「できあがったもの」を文書にできます。画面があり、項目があり、処理があります。検収の基準もそこから決まります。
生成AIの案件では、この前提が崩れます。違いは3つあります。
完成の定義が決めにくくなります。「問い合わせに適切に答える」という要件は、人によって合格ラインが違います。この線引きをしないまま開発に入ると、検収で揉めます。
正解がなければ測れません。従来のテストは仕様との一致を確認します。生成AIでは、まず何を正解とするかを決めてから、正解と出力を突き合わせる仕組みを作る必要があります。この仕組みづくり自体が工数を持ちます。
運用費が出続けます。推論の費用、検索基盤の費用、品質の監視。開発費とは別に、毎月発生します。初期見積もりに含まれていないことが珍しくありません。
PoCで止まる3つの理由

ひとつ目は、合格ラインを決めずに始めることです。PoCの結果を見て「まあまあ良い」と感じても、本番に出す判断はできません。数字の基準が無いからです。着手前に、どの程度の精度なら業務に載せるかを決めます。
ふたつ目は、データが整っていないことです。社内の文書が部署ごとにばらばらで、同じ用語が別の意味で使われている状態では、どの手法を使っても出力は安定しません。この場合に必要なのはモデルではなく、データの整理です。
みっつ目は、運用の担当が決まっていないことです。生成AIは出したら終わりではありません。出力の確認、プロンプトの修正、費用の監視を誰が続けるのかを決めていないと、PoCの先に進めません。
3つとも、技術ではなく意思決定の問題です。だからこそ、委託先を変えても解決しません。
合格ラインの決め方
「精度90%」という決め方は、一見明確に見えて役に立ちません。何を1件と数えるかが決まっていないからです。
実務では、次の順で決めると形になります。
まず、評価に使う入力を集めます。実際の業務で発生した問い合わせや文書を、50件から100件ほど用意します。きれいに整えず、現場で起きている形のまま集めることが大切です。
次に、それぞれの正解を人が書きます。この作業は業務を知っている人にしかできません。外部に出せない部分でもあります。
最後に、何割正解すれば業務に載せるかを決めます。あわせて、間違えた場合に誰がどう気づくかも決めます。人が確認する前提なら、許容できる誤りの幅は広くなります。自動で処理する前提なら、基準は厳しくなります。
この3つがそろうと、PoCは「やってみた」から「判断できる材料」に変わります。
発注側が手放せない3つの役割
委託できる範囲は広くなりましたが、発注側に残る役割はあります。
経済産業省は、DXを推進する人材の役割と習得すべきスキルをデジタルスキル標準として定義しています。生成AI技術の急速な進展を踏まえ、2024年7月には「DX推進スキル標準」をver1.2へ改訂しました。役割を外部に委託する場合でも、自社に残すべき判断は変わりません。
残すべき役割は3つです。
業務の正解を決める役割です。どの出力を合格とするかは、その業務を知っている人しか決められません。ここだけは外注できません。
データの持ち主としての判断です。どのデータを社外に出すか、何を匿名化するか、どのサービスを経由させるか。情報システム部門と事業部門の合意が要ります。
運用を続ける体制づくりです。本番後に出力を見る担当者を決め、その時間を業務として確保します。
IPAはDX白書で、国内外の企業のDXへの取組状況を戦略・人材・技術の3つの観点から調査しています。技術だけでなく戦略と人材が並んでいる点は、生成AIの委託でもそのまま当てはまります。
社内データの扱いは3つの論点に分かれます
生成AIの委託で、情報システム部門が最も時間を使うのがここです。先に整理しておくと、後の契約交渉が短くなります。
どのデータを社外に出すか。 全社の文書を一度に出す必要はありません。対象業務に必要な範囲だけを切り出します。範囲を絞るほど、審査も早く終わります。
何を匿名化するか。 個人名、取引先名、金額。業務の判断に不要な情報は、開発環境に入れる前に落とします。落としたことで精度が下がるなら、その事実を記録して判断材料にします。
どのサービスを経由するか。 推論をどこで行うか、ログがどこに残るか、学習に使われない設定になっているか。利用するサービスごとに条件が違うため、一覧にして確認します。
この3点は、委託先を決める前に自社で整理できます。整理した状態で相談すると、提案の具体性が変わります。
委託範囲の決め方:4つの型

相談のみは、自社に開発体制があり、進め方の整理だけを外部に求める場合です。業務の棚卸しと、どの業務に生成AIが効くかの判断を一緒に行います。発注側には開発チームが必要です。
PoCまでは、技術的に成立するかを確かめる段階です。ここで重要なのは、PoCの合格基準を契約前に決めておくことです。基準が無いPoCは、感想で終わります。
本番開発までは、既存システムとの連携、権限管理、監視を含めて作り切る範囲です。生成AIの部分はコードの一部にすぎず、周辺の作り込みのほうが大きくなります。発注側には、業務側の意思決定者が必要です。
運用込みは、本番後の出力確認、プロンプトの改善、費用の最適化まで任せる範囲です。社内にAI人材を置けない企業に向いています。発注側には、月次で結果を見る担当者が必要です。
型を先に決めると、見積もりの比較がしやすくなります。範囲が違う見積もりは、金額だけを並べても意味がありません。
ベトナムに委託する場合の判断材料
海外に委託する際の不安は、技術よりも契約と連絡の取りやすさに集中します。
MOHAの場合、契約と請求、日々の窓口は日本法人(横浜市西区みなとみらい)が担当します。海外企業との直接契約に伴う法務や為替の負担は発生しません。
日本とベトナムの時差は2時間です。日本の午前中に投げた確認は、その日のうちに返ります。生成AIの案件では、出力を見て合否を判断するやり取りが何度も発生するため、この近さが効きます。
開発体制としては、専属チーム型、エンジニア補強型、プロジェクト単位の請負型から選べます。ラボ型開発を選ぶ場合、指揮命令はMOHA側のPMとブリッジSEを通じて行います。AIを前提とした体制の考え方は、AI統合型ODCの記事にまとめています。
見積もりの確認点
金額だけを見ても、生成AIの見積もりは比較できません。次の点をご確認ください。
委託範囲は4つの型のどれに当たるか。範囲が違えば金額は当然変わります。
評価の仕組みが含まれているか。正解データの作成と、精度を測る仕組みの工数が入っているかどうかで、後の進め方が変わります。
運用費が開発費と分けて示されているか。推論と検索基盤の費用は、本番後に毎月かかります。
成果物の所有関係が書かれているか。ソースコードだけでなく、プロンプト、追加学習したモデル、評価データの扱いを確認します。この3つは、後から作り直すと高くつきます。
個別の金額は案件によって変わります。想定されている業務と手元のデータをお知らせいただければ、具体的にご説明します。
よくある3つの誤解
相談の場でよく出る思い込みを、先に整理しておきます。
「社内文書を読み込ませれば、すぐ答えられるようになる」。 文書を検索して回答する仕組みは有効ですが、前提として文書が整理されている必要があります。版が複数あり、どれが最新か分からない状態では、古い情報を自信を持って返します。精度の問題ではなく、情報管理の問題です。
「精度が足りないのはモデルが古いから」。 モデルの変更で改善する場合もあります。ただし、多くは入力データの作り方と、質問の受け取り方に原因があります。どこで間違えているかを測る仕組みが無いと、モデルを変えても良くなったかどうかが分かりません。
**「PoCが動いたので本番も動く」。**PoCは限られた入力で確かめたものです。本番では想定外の入力が入り、同時に使う人が増え、費用が積み上がります。本番で初めて現れる課題は、PoCの延長ではなく別の設計課題として扱います。
MOHAの進め方
MOHAは生成AIとLLMを使った業務アシスタントを手がけています。AI-OCR、画像認識、議事録の作成支援、テストケースの自動生成にも対応します。いずれもPoCから本番導入まで対応します。
自社プロダクトも開発しています。SpecLensは要件定義書を分析します。Design Checklistは設計チェックリストとテストケースを自動生成します。AMI Botはサーバーのログを監視します。MIAはオンライン会議を支援します。自社の業務で使い、改善してから提供する流れです。
公開している導入事例には、行政機関向けのAIチャットボット、工場のリスク管理AI、AIによる請求書読み取りアプリが含まれます。業種は公共と製造、ホテル、教育に広がります。医療や美容の案件もあります。詳しくは導入事例をご覧ください。
サービスの詳細はAIコンサルティング・AI開発にまとめています。業務全体の見直しから入る場合はDXコンサルティング、専属チームを置く場合はベトナムオフショア開発(ODC)をご覧ください。
ご相談ください
生成AIをどこまで委託できるかは、業務の性質と手元のデータで決まります。まだ対象業務が絞れていない段階でも構いません。
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